日時:2025年7月19日(土)14:00-17:30
場所:立教大学池袋キャンパス9号館大教室(ウェビナー併用)
1970年代から1980年代にかけて、日本では中世北欧文化への関心が高まり、いわゆる「中世北欧ブーム」が巻き起こった。この背景には、中世アイスランド文学の代表作である『エッダ』(1973年)および『アイスランド・サガ』(1979年)が、谷口幸男によって中世アイスランド語原典から翻訳されたことがある。これら二冊の翻訳書は、日本の読書界において長年にわたり親しまれ、近年では新たな世代の研究者によって復刊されるに至っている。
この半世紀の間に、これら翻訳書を取り巻く環境には大きな変化が見られた。第一に、北欧中世に関する学術的研究が飛躍的に発展し、多数の専門書が出版されるようになった。谷口による古典的翻訳に加え、ヴァイキング、北欧神話、中世アイスランド社会に関する学術的知見が、日本語でも広くアクセス可能となっている。第二に、日本人研究者と北欧現地研究者との間で、留学、研究者招聘、国際シンポジウムへの参加などを通じた学術交流が活発化し、それに伴い日本におけるアイスランド像もより多様かつ豊かなものへと変化している。第三に、こうした翻訳や研究の成果が、現代日本における歴史創作に影響を及ぼすようになった点が挙げられる。
本シンポジウムの第1部「21世紀の北欧中世研究」においては、復刊にも関わった研究者による北欧中世に関する研究報告を行う。第2部「歴史創作と西洋中世」では、北欧中世を舞台とする漫画作品『ヴィンランド・サガ』の作者・幸村誠氏および、西洋中世における唯一の女性歴史家を主人公とした『アンナ・コムネナ』の作者・佐藤二葉氏を迎えて、最終回を迎えたそれぞれの作品について、とりわけ中世北欧に関連させてお話しいただく。最後のディスカッションでは、現代日本における研究・翻訳・歴史創作などの関係、その特徴、その可能性などについて考察を深める機会としたい。
【プログラム】
司会:上倉あゆ子(東海大学)
14:00~14:10 導入:小澤実(立教大学)
第1部 21世紀の北欧中世研究
14:10~14:30 報告1「『【新版】アイスランド サガ』(2024)と中世アイスランド研究」:松本涼(東海大学)
14:30~14:50 報告2「『【完全版】エッダ 古代北欧歌謡集』(2025)と戦後日本の中世北欧イメージ」:小澤実
14:50~15:10 報告3「中世アイスランド語テクストとDH」:山田慎太郎(東京大学)
Coffee Break
第2部 歴史創作と西洋中世
15:30~16:00 報告4「『ヴィンランド・サガ』連載を終えて」:幸村誠(漫画家)
16:00~16:30 報告5「『アンナ・コムネナ』連載を終えて」:佐藤二葉(作家・パフォーマー)
16:30~17:30 ディスカッション(全員)
主催:科研費基盤研究(B):課題番号25K00515
共催:立教大学文学部史学科、日本アイスランド学会
後援:駐日アイスランド大使館
参加は無料ですが登録必須。以下で。
https://www.rikkyo.ac.jp/events/2025/07/mknpps0000038cqj.html
