若手セミナー「西洋中世学研究者のためのデジタル・ヒューマニティーズ入門」報告

学会情報

 2024年2月13日(火)、東京大学本郷キャンパスにて2023年度若手セミナー「西洋中世学研究者のためのデジタル・ヒューマニティーズ入門」が開催されました。本企画は、2020年3月に開催が予定されたものの、新型コロナ・ウイルス感染症の流行により延期となっていました。このたび4年越しに実現することができました。
 当日は30名以上の参加者にお集まりいただき、全員が自身のパソコンを実際に操作して作業を進める実習を行いました。前半は、夏目漱石の手紙を題材として、人文学のテクストを機械可読形式で記述するための国際基準であるTEI(ティーイーアイ)に沿ったマークアップの技法を学び、後半は、オヴィディウス『変身物語』の写本の図像を用いて、デジタルアーカイブ間での画像の相互運用を促進するIIIF(トリプルアイエフ)という国際規格を利用した画像の加工と収集を実践していただきました。講師の方々のサポートを受けながら、全員が集中して作業に取り組み、非常に活気のあるセミナーとなりました。このセミナーが、デジタル・ヒューマニティーズ研究への関心を喚起し、デジタル中世学(Digital Medieval Studies)に関わる議論の活性化につながることを願っています。
 以下には、当日のプログラムと、アンケートから抜粋した参加者の感想を掲載します。

(纓田宗紀)

【プログラム】
13:30 – 13:50 趣旨説明
纓田宗紀(アーヘン工科大学)
13:50 – 15:10 TEI – 文字史料をマークアップしてみる
小風尚樹(千葉大学大学院 人文社会科学系教育研究機構 助教)・永崎研宣(人文情報学研究所主席研究員)
15:30 – 16:50 IIIF – 西洋中世写本の画像を加工してみる
小川潤(人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)特任研究員)・中村覚(東京大学 史料編纂所 助教)
17:00 – 17:30 ディスカッション

【参加者の感想(アンケートより)】
・ DHには以前から興味がありましたが、なかなか実践するには至っていなかったので、この企画が今後DHを自身の研究に取り入れていく第一歩になりました。
・演習を通して、一見複雑そうにみえるTEIやIIIFの使い方のイメージをつかむことができました。実際に自分で挑戦する際のハードルが少し下がりました。
・何も知らない状態で参加しましたが、どのように使えるか考えがふくらみました。
・実習がメインのセミナーで大変勉強になりました。技術的な話はこの分野にいるとあまり入ってこないため、とても貴重な体験でした。
・DHといっても、何ができるのか、どのようなツールを使用するのか、基礎的なところから知らなかったので、入門編としてとてもよい機会をいただきました。
・関東以外でも開催してもらいたいです。

【今後若手セミナーで扱ってほしいテーマ(アンケートより)】
・今回のセミナーでプログラミングの必要性を感じたので、人文学者向けのプログラミング講座や、DHのより発展的な講座があると助かります。
・Transkribusのセミナー
・中世俗語史料の読解に関するセミナー
・パレオグラフィー講座

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